大人

大人とはなにか。
愛されるに足る「大人」とはなにかよくわかっていなかったのだが、たぶん俺のイメージする「大人」とは、アライグマくんのおとうさんなんだと思う。ぼのぼのの。
出てくるたびになんらかの新しい趣味らしきみたいなものを見つけているアライグマくんのおとうさん。でもけして楽しそうではない。
アライグマくんのおとうさんは、ぼのぼのが一大事だと思ったことを伝えても「そうか」と言っただけだった。ぼのぼのが「知ってたの?」と聞くと「知りゃあしないが、大人はそんなことには飽き飽きしてんのさ」と答える。 アライグマ君のおかあさんとひさしぶりに会ったときも、「おまえは何が楽しいことだと思っているんだ? 結婚したり、子供が生まれたりすることか? おれは、岩を落とせば地面がへこむことや、川岸を掘れば水があふれることや、石を投げれば鳥が捕れることが楽しいのさ」と話している。
たぶん、俺の思う「大人」とは、一通りのことを経験して、好奇心が抑えられた人のことなんだろう。
おれはまだまだ好奇心旺盛。スカイダイビングに行ってみたり、思いつきでバイオリンやミシンを買ってみたり、ウォシュレットの仕組みが見たくて座らずにスイッチONしてみたり。経験が足りない。経験。エクスペリエンス。レクイエム。いろいろ経験しなければ。